私にとってテストみたいな人だった

エッセイ

ある冬の日、TELをした
モゴモゴと、相手は、TELは本当は得意ではないタイプのよう
根本をたどれば、向こうは私に関しがあったような素振りはなかった
完全に私が一方的な状況といえる
そんな具体でやりとりもバランスも、比重はこちらのほうが重い

明らかにキョーミがないのにとりあえずつないでいるというまったく意味のないやりとりに
私は「キョーミないのにわざわざ電話しなくていいですよ」と気遣いを一刀両断
彼も「ああそうですか」と15分ほどでTELを切った
あとから聞けば向こうは「なんなんだこいつ」「もうやりとりすることはないだろう」とも思ったらしい

正直こちらも同じである
けどその時私はひとつ考える。せっかく関わったしTELが合わないだけで別のつながりの選択はあるかもしれないと

「ありがとうございました」
ふだん送らない電話のお礼を送る
加えて直近の写真フォルダに入っていたたぬきの石像の写真を送り、「こんなかんじでまた何か日常で見つけたら
なんでもいいので気軽にぜひ送ってください」とメッセージをした
向こうは「季節の変わり目に送ろうかな」と返し“冬の陣”は終わったのであった

+ + +

それからhr津御成、寒く身震いしていた私も雪解け
人と会うマインドが高くなってきた なんたって春だし
そんな頃合いで冬の陣で決着していた彼から連絡がきた
初動、なんてきたか覚えてはいないが「ホントにきた笑」と返したことは覚えている

それからわからないけどフワフワした当たり障りのない雑談が続いた
何が目的なのか? とはいえ会うマインドが高かった私は「会いましょう」と言葉を送り
彼も「そうね飲みましょう」と2つ返事であった

私は「空いている日連絡しますー」と返したものの、なぜ連絡がきたのかよくわからないし最初の電話の印象はお互い最悪だと思うし
優先順位は圧倒的に低い

そんな感じでぼにゃり予定を立てることもなく、私は違う人とあったりを繰り返していた

とある日、妹と少し喧嘩のような言い合いになり、錦糸町の戦闘で気分を変えようとしていた
お酒を飲んで気分転換をしたかったし、アプリで誰か会える人を探していた
そこでふと「あの人に連絡してみるか」とよぎり、「今日空いてますかー」と唐突に連絡をしてみた

そうするとすぐに「今日行けます!!!!」とびっくりまーくの使い方を知らないような、無数についた連絡がきた
私にとって、この人は優先順位がとても低い状態で、投げやりで誘ったことに申し訳なさを感じたものの、結局会ってみることにしたのであった

いつも人と会うときはそれなりに服に気を遣うけれど今日は適当だなあと思いな側、1930に神田で待ち合わせた

+ + +

待ち合わせ時間、実際に顔を合わせてみたらアプリの写真とは良い意味で姿形が違っていた
塩顔、派手な色味はなく白いシャツに黒い上着、ベージュのパンツに薄い色が入ったサングラスをかけた
40手前の男の人にしてはやや若めの、シュッとした姿であった
その時の私はとても好みの見た目であると驚き「まじか汗」と強く思ったのが第一印象である

それから向こうの知っていた居酒屋に生き、対面で座ってもやはり見た目の「良いね」のパーセンテージが高く
「まじか」の言葉しか浮かんでこないほどに私はタジタジしていた

腕にはチープカシオをつけ、シャツのボタンを上までとめ、バンズのスニーカーを履き、私には武装しているというようにも見える姿

ヤエカ、無印のような落ち着いた色味の色彩で統一されており、白い肌とのバランスが非常に良い選択をしていると感じた

その上話をする中、エンタメ、ラジオ、映画、お笑いなど、サブカルチャーが好きで、なおかつ全体的に浅く広いスタンス、テンションで
似ている価値観なのも驚いた
家の境遇、あまり家庭環境が良くないといった話もして、共感もたくさん出てきた。

この時振り返ればこう思っていたのは私だけだったようだが、共通点が多くてとにかく私は驚いた

飲み代はなぜかおごってくれた 年齢が離れていることもあり、向こうにとってこれは普通のことなのかも?しれない
それから居酒屋を後にし、1駅歩いて散歩して返った

別れてからすぐに「めちゃくちゃ楽しかった!!!!!!」とまたしてもびっくりマークの使い方を知らない連絡がきた

最初こそつまいずいたものの、こんなことがあるのかと思った
それから向こうから「こんなことがあった」「何してるの」などちょくちょく連絡がくるようになった
これは俗に言う矢印なのだろうか
ひとまずもう一度会って確かめてみたい

+ + +

計画をするのが苦手な私だが、珍しく日付を打診し、合う約束をした

その日から私は1週間、家のことでいろんなことが起き、私の心の波は大荒れとなった
なんだか家に帰りたくないとずっと思っていた

合う約束の日、この心の波が少しでも人に気づかれそうでもどかしく会うのを断ろうか、ギリギリまで悩んでいたが
そのタイミングで「明日何時にする?」と連絡がきて「よしこれは行くしかない」と腹を括り
なんとか断らず行くことにした

当日、少し早く着いてカフェで作業をしていた とても居心地の良いサ店で
「このカフェ雰囲気が良いです」とお店の写真とともに「来るまでここでまってます」と連絡したら
彼は着いた頃合いでカフェに現れた
はかどっていた作業も、対面ではしどろもどろでやっている雰囲気だけかまして
心はタジタジ 早々に切り上げ居酒屋に行くことに
時刻は1830

いつも人と会うと「楽しんでほしい」「つまらないと思われたくない」という気持ちが発動して
自分の中の引き出しをいっぱい開けて自分の身に起きたエピソードトークをしてしまう
非常に良くないくせだ
彼もいお酒を飲んでいて楽しそうに聞いてくれた

でもその時間を過ごしていて、私は彼に矢印が向いているけど向こうはまったく向いていないことが
雰囲気で感じ取れた
今までのアクションや行動、言動はなんだったのか
恋愛経験値の低い私としては未知の世界である

それから居酒屋を後に隅田川まで缶のお酒を飲みながら散歩した
ここでコトは発生したのである

私は「家に帰りたくない」「本当はここに来るまで悩んだ」と心の波の話を寄った勢いで吐露していた
どのように聞いていたのかはまったく覚えていない
「帰りたくないなー」とぼやいていた

「それなら」
そこから記憶は薄いがなぜかホテルに行くことになっていた

このことについて、後々聞いてみたところ、私が欲が薄いことは知っていたし
「行ってただ寝るつもりだった」と淡々と答えていた

私は多分まったく向けられない矢印が悔しかったんだと思う
結局何もしてないけど何かはしたくらいのことはあった
それについてそんなことになると向こうは思わずとても驚いたそう

その後、私は思いを込めたつもりで気持ちを長文で送ったが応答はなかった

その後何気ない雑談を送ったら返答がすぐにきた
この違和感ははじめにTELをしたときに感じた違和感と同じだ

恋心、わかりやすさ、まっすぐに「矢印向いてます」だとか「デートしてください」と恥ずかしさ
100%でもピュア度MAXで送った
だが相手は38歳、恋愛経験低めの私ではこのウブさは伝わらかなかった模様

多くの大人にとってもデートという言葉に何も重きをおいていないのかもしれない

+ + +

向こうからちょくちょく連絡がきてた矢印も途絶え
ホテルの一見以降、比重バランスは私が重く偏っていたと思われる
「わかってくれる可能性がある」と親近感が湧いて、何かとラインを送っていた私であった

けどそこまで応答がなかったり前ほど向こうも送ってこなくなり
「あーこの比重バランスが私が重くなる感じ
今まで何度も通ったよーこりごりよ!
もうこの人に肩入れするのはやめよう!」と

私から連絡するのはやめようと思った

その後、私がリゾートバイトで淡路島に出発する日が近づいた
前日の夜、出発に向けて準備をしていると、急に「いつから行くの?」と連絡が来た
続けて「明日じゃなかったら飲みに誘ったのにー」。

先日あんな矢印どストレートな長文を送ったのにどんなつもりなんだと思いつつ
加えてこの人にとって都合の良いものになりつつあるなと気付かされた

とはいえ家にいたくないという気持ちは絶えずむくむくと湧いていた
どうせ翌日早起きするなら東京駅に近いほうがいいと「ホテルで飲もう」と打診
向こうものっかってきた

時刻は23:30
終電もまもなくという頃に上野で待ち合わせた
コンビニに寄り近くのレトロめいたラブホに入った 2度目ということもあり抵抗はやや少なめ
ただシラフで入るのはやや恥ずかしさもあった

以前会った時、財布を忘れてしまった私
ここのホテル代について、なんのやり取りもしていないが、15800円なぜか私がすべて払った

ホテルに来たとはいえ「どういうつもり?」と思いつつとはいえあれこれ話をして
緊張もあいまって前回同様にコンビニで買ったお酒をグビグビと飲んだ

案の定そこにはベッドがひとつ
条がないとどうしてもできない することがもったいないとかしぶってるつもりはないが、
都合よく扱われていることが前提なのがわかっていて体を差し出すほど軽く思われたくないと
ホテルに行っといて謎のポリシーが内に込み上がってきた
またしても結局何もしてないけど何かはしたくらいのことはあったパート2

一体何なんだ?

気付は時刻は翌朝になっており、ギリギリで新幹線に乗り込んだ
やはりお避けの飲み過ぎで記憶は曖昧であった

「ちゃんと乗れた?」「次はお酒を飲みすぎないようにとめるね」と謎の気遣いのメッセージ
それから淡路島でのリゾートバイトの期間、私の心の中でこの人は生き続けていた

+ + +

私は「女性」として露骨に扱われるのが苦手だ
これは幼少期からの女々しい母親の姿を見て「私はこうなりたくはない」と強く思ったこと、
また何もせずとも父と仲良く話をしていて母に嫉妬されることもなんとなく勘づき
長女ではなく頑張って男の子、長男のように
喋り方も今でも男子中学生のような「っす」をつけて話してしまうのが癖だ

だから男の人には「話しやすいねー」といってもらえるし、すぐに群れたがる女の子たちより
男の子と話したほうが楽だった

一方で私が男の人で良いなと思うこともあるわけで
けどすでに私の中の男性性優位な状態で接してしまっているから
女の子としてみてもらうことは難しい、その分岐にはいないと気付いた頃には
通り過ぎてしまっていている。

この彼はホテルに行った時点で「ホテルに行ったけど何もしない人」という認知になってしまっているし
ここから良いと思ってもらうスイッチは私が押すことはできず終わるんだろうとも悟った

+ + +

もとを辿り、知り合ったのは出会い系アプリ
なぜ彼はアプリをやっていたのか
彼は自己肯定が下がっているときにアプリを開き、承認欲を満たしている
波があり下がっているときに他者に心のスキマを埋めてもらいがちなようだった

結局私は彼にとっての養分のひとりになっていただけである

淡路島にいる間、彼の行動や言動などを振り返る。
自分の取っている行動、言動、アクションのひとつひとつが他者にどう映るのか
考えないまま38歳になってしまったんだろう、愚かだなと思った

一方で振り返るとかつて付き合っていた9個上の彼に似ているとも思った
好きなものや価値観がとても似ている点が
その上直近でとても好きだったアスペルガーの彼にも似ていた

私の頭の回転が早すぎるのか?

言ったことに対してまったく応答してくれない
あまり人を理解しようとするタイプでもなかった

もしかするとASD?
彼は一応意味は知っていたが、まさか自分が該当するとは、そもそも自分を疑おうともしていないんだろう

+ + +

この彼と関わっていた期間、私は「テストみたいな人だ」と思わされた
この人にのみこまれてはやっと切り開きつつあった今の私の人生が停滞してしまう
何より、これからも関わり続けて得られるものは少ない

最初こそ知らないから「こんな人なんだ」と楽しくなる
なんだかんだ2回目も楽しい空間にすると私が徹してしまうことで
楽しい空気になり、「楽しい」「かもしれない」にはなる

だからもっと鳥の目で俯瞰して見れていなかったし
見た感じがいいなあ、いうなれば中身は骨組みがなくとも
外観がすきだから無理くり「好き」と思っていたようなもので

こんなに合うところが多くても「この人いいな」と1mmも思ってもらえなかったのは
私の不徳のいたすところ

だけどもそういう意味でも目にトレーシングペーパーが貼られて
目の前にいる人がどんな人か見えないアスペの要素はあったと思うし
矢印が自分に向きすぎて目の前にいる人の矢印にも気づかないし
自分のしているアクションも顧みないようであれば
メキメキ意識を中心に生きている私からして相反する人であることは間違いない

+ + +

淡路島にきて「リゾートバイトどう?」と自己肯定のための
その時の少し心が揺れている私にとっては期待するようなラインがきた
私はここで決めてやろうと思った

「TEL苦手って言ってたし、対面っぽいテレビ電話するのはどう?」と打診
またしても「してみよう!!」と変わらずびっくりマークの使い方を知らない連打された
テンション高めの文言がきた

とはいえ私は頭の中で考える
「電話をしない、しなくてもいい」「いっそ断る」「後日にする」など選択肢を広げてみた

答えはTELをするだけではない、1つではないと必死に私の考えられる手札のカードを広げ
余裕を作り出そうとした
それでも約束を交わしてた22時にテレビ電話をした
おそらく最初で最後

対面はやはり緊張するな 用意していたお酒をぐいぐいと飲んでいたが 20,
30分と時間が経つにすれ慣れてくる
酔いも冷めてきた

その後覚悟を決め、最初にTELをしてから一連の流れ、私が何を感じどう思ったかまで
すべてを話した

ここからすくい取ってくれることがあるならばと最後のあがきである

とはいえ彼から出てきた言葉は「おもしろい飲み友」の言葉だけであった
あとは私が早口でしゃべったことの情報量の大阪にどこかついていけない表情
困惑、苦笑い、なんともいえない顔を終始していた印象

それでも38歳のプライドだろうか?
なんとなくわかったフリのような、口角の片側だけを上げて透かして笑う
その笑い方が私にとって非常に不快に感じた

そんなこんなで「私は好意的に思う、階段がある人と思った」とまで思わず言っていたけど
「おもしろい飲み友」この9文字だけを放ち オブラートにつつむこともなくずっと平行線

しまいには何もなかったように「また飲みに行こうよ〜」と言われた
あざといというよりは物わかりの悪いタチの悪さが目立つ

最後には自論をたたきつけ「なんか思わせぶりでごめん」と謝らせるところまでに至った
「いやわかってるんで謝られる筋合いはないですよ、フォッフォッフォ」と一刀両断した私
あれ?本当に相手のことを好意的に思っていたのか?
われながら、そんな気配すら感じさせないくらいの強い言葉の剣である

+ + +

思い返すと実際に会ってから一悶着、ふた悶着あったが、
最初にTELをして「いやーもう会うことはないな」と感じたその違和感から
特に関係は変わってないのではないだろうか

とはいえ私の矢印を向けたことに対し
ナアナアに「そっか」と思ってもないのに受け止められて
変に流れでそうなるよりはよっぽどよかったし、ある意味でこれで向こうからの
粘着質な自己肯定を埋めるための養分的なラインも来なくなる

私もはじめからブロックをするという手段がとれるならそれに越したことはないが
さすがに私も人間で弱さはある

何より彼もまた、かつてのアスペの彼のように
頭の回転、脳を使っているタイプではなかったが
38歳のわりに良くも悪くも純粋、無垢なところが見た目に現れていて
その姿に熱烈に惹かれるものがあったんだと思う

でも私はこの手放せた、どこか振られたようなでも解放されたことへの喜び
おわりはなにかのはじまりと、言葉を浮かべて
「テストに受かったー!」と高揚した気持ちに駆られた

ちょっと悲しかったけどでも嬉しくて
夜中にリゾートバイトの誰もいない道でクルクル周り踊るように徘徊した
失恋っぽい曲背中をさすってくれる曲前向きになれそうな曲も聞いて
感情を感じきり浄化しきった
自分の音楽のレパートリーを駆使して
また新しい明日に備えて夜中中思い浮かんだことをできるだけ感じきった

+ + +

かれこれ冬から始まり、春2週間のできごと
いつもならこんなことでも引きずるタチだけれど
4、5日経てばケロッと忘れるくらいには成長した

私はテストのような試練を乗り越え、次は一体どんなテストが待ち受けるのか
怖いけれど今の私ならなんとか乗り切るに違いないと思った
そんな、高卒から郵便会社で荷物を運び続ける彼との出会いと別れの話であった。

タイトルとURLをコピーしました